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リーダーは複数案件を掛け持つことは正しいのか

「役職がついたら複数案件を持て」――そう言われてきたが、本当にそれは正しいのだろうか。
現場で数年間、複数案件のリーダーを務めながら感じた違和感を、率直に書き残しておこうと思います。

0.5人月のリーダーという現実

現在、私は「主任職」であり、2つのプロジェクトにリーダーとしてアサインされている。
それぞれ0.5人月ずつ、合計で1人月。数字の上では問題なさそうに見えるが、実態はかなり厳しい。

リーダーの仕事は、コードを書くだけではない。メンバーの進捗把握、課題の早期発見、ステークホルダーとの調整、方針決定――これらはすべて「時間をかけて状況を深く理解していること」が前提になる。0.5人月では、その前提を満たすのが難しい。

さらに厳しいのが、新規プロジェクトの場合だ。
既存案件ならある程度頭に入っているが、新しいプロジェクトは業務内容・チーム・技術スタック・背景をゼロから把握する必要がある。
その「立ち上がりコスト」を0.5人月の中でこなすのは、現実的に無理がある。

「複数掛け持ち」が向いているのは誰か

上層部から「役職がついたら複数案件を持て」と言われてきた。これは完全に間違いではないと思う。
ただ、「役割」を間違えてはいけない。

役割掛け持ち適性理由
責任者・マネージャー層向いている意思決定・エスカレーション対応が主な役割。複数案件を俯瞰するのがむしろ仕事。
現場リーダー(テックリード等)リスク大メンバー管理・技術判断・進捗管理を現場で担う。コンテキストスイッチのコストが高い。

問題は、この2つが混同されがちなことだ。
「リーダーを2案件やれ」という指示は、現場リーダーに責任者レベルの分散を求めているケースも少なくない。

作業者の方が掛け持ちに向いている理由

むしろ、複数案件の掛け持ちがしやすいのは作業者ポジションではないかと最近思う。

作業者は、担当するタスクのスコープを明確に切り出せる。「このスプリントではこの機能だけ」と範囲を限定すれば、案件間の切り替えコストを最小化できる。リーダーのように「全体を把握し続ける」義務がない分、複数案件でも一定のパフォーマンスを維持しやすい。

もちろん、作業者でも掛け持ちが常に正解とは言わない。ただ、「分散に耐えやすい役割」という観点では、リーダーより作業者の方に分がある。

では、どうすればよいか

現場リーダーに複数案件を持たせるなら、少なくとも以下の条件を揃えるべきだと思う。

  • どちらかの案件がすでに安定フェーズに入っていること
  • メンバーが自律的に動けるレベルに育っていること
  • 2つの案件で使う言語やアーキテクチャ、ビジネス領域が極めて近いこと
  • リーダーがパンクした際に、すぐさま介入してくれる「さらに上のレイヤー」がいること


ほかにも、即レスが不要となる、現場判断の「バッファ」が許容されているとなお良い。
両案件から「今すぐ判断して!」と飛んでくると、確実にリーダーがボトルネックとなり、チームとして進捗が止まってしまう。

まとめ

結局のところ、「複数案件を持てること」はスキルでも優秀さの証明でもなく、役割の性質と、その案件の状況が噛み合って初めて成立するものだと思う。

現場リーダーが薄く広く複数案件を抱えるより、一つの案件にどっしり構えてチームを引っ張る方が、プロジェクトにとっても、メンバーにとっても、結果的に組織にとっても価値が高いと思う。

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